波乱の時代 アラン・グリーンスパン
本書は、2007年11月に日本語版が出版されたアラン・グリーンスパン著「波乱の時代」の特別版であり、2008年9月に刊行された「The Age of Turbulence」のペーパーバック版に、新たに書き下ろしで追加されたエピローグを訳出したものです。
私は先に出版されている「波乱の時代」の上下巻の分厚い方は読んでいません。が、「波乱の時代」の上下巻を読んでいなくても、内容に付いていくことはできました。
専門的な用語がけっこう出てくるので、ちょっと戸惑うところもありますが、 FRB議長時代の発言よりも、ずっとわかりやすく語っています。ページ数は60ページほどで、525円という買い易い値段設定がされています。
「波乱の時代」という原著の原稿が完成したのが、2007年6月で、出版されたのは2007年9月。この3ヶ月の間に、いわゆるサブプライム問題が起こっていますので、ある種予言的な著書といえます。
この特別版では、2007年8月以降に何が起こり、どう考えるべきかが記されています。
グリーンスパンがFRB議長を務めた18年間は、アメリカ経済が停滞から抜け出して復活する素晴らしい時代となったこともあり、グリーンスパンは「金融の神様」とか「マエストロ」とか呼ばれていました。
だが現在では、グリーンスパンの時代に政策金利を下げすぎたことが、今回の金融危機の原因になったと批判されてもいます。
ただ、この本を読んで、グリーンスパンの知識の深さと頭の切れを、改めて認識させられました。
一番印象に残ったのは、以下のくだりです。
「金融市場で起こる急変をすべて予想できるようになるとは考えられない。急変はそもそも予想外の動きなのであり、事前に予想されれば、裁定取引によってほぼ起こらなくなる。しかし、陶酔感が蓄積していく時期にそれを抑制するのはきわめて難しいのではないかとわたしは強く感じており、この見方が正しければ、投機熱が行き過ぎてみずからの力で崩壊するまで、バブルは続くことになるだろう。~中略~ しかし、リスク管理が完璧になることはありえない。いずれ失敗するときがおとずれ、とんでもない現実があきらかになり、予想されなかった反応が急激にあらわれて、金融市場で『危機』と呼ぶ現象が起こる。」
グリーンスパンの主張を信じるならば、これからもバブルとその崩壊は発生し続けるということです。
その大きな波の変化を少しでも早く検知できれば、投資結果にも良い影響が出るのだろうと思います。巻き込まれてから気付くのでは遅いということですね。